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全米のプロデューサーが選んだのは、英国王の話

Sunday, 22 January 2011 

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ハリウッドの賞レースもたけなわ。
今日は、プロデューサーズ・ギルド・オブ・アメリカ
全米プロデューサー組合賞が発表になりました。

 

ダリル・F・ザナック・プロデューサー・オブ・ザ・イヤー賞は

『ソーシャル・ネットワーク』を下し、

『英国王のスピーチ』が受賞したようです。

どうやらこの結果、ハリウッドの大方の予想に反して、

かなりの番狂わせと捉えられている様子。

 

さてこの、ダリル・F・ザナック・プロデューサー・オブ・ザ・イヤー賞、

通称、全米プロデューサー組合賞とはどういう賞なんでしょう?

 

とてつもなく長い名前の賞ですが、

ダリル・F・ザナックというのは、

『イブの総て』などを生み出した往年の大プロデューサー。


彼の功績にちなんだ賞として授与されるこの賞は、

アカデミー賞の作品賞に最も近い指標とされています。

 

ところで、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞と比べて、

ちょっと馴染みのない賞ですね、PGA賞って。


この賞に投票するのは、
PGA(Producers Guild Of America=アメリカ・プロデューサー・組合)のメンバーたち。


映画の場合は、劇場公開作品2本以上にプロデューサーとして

名前がクレジットされたプロデューサーしかメンバーになれません。

ビギナーズラックでひいこら言いながら1本作っただけでは、

簡単にはメンバーになれないのです。

格式を保つためには、ある程度の敷居の高さも必要なのですね。

 

メジャースタジオのプロデューサーならば、

何年か勤務していれば、本数は増えていくのかもしれませんが、

さて、インディペンデント界のプロデューサーだった場合は

どうやったらこの投票権を獲得できるのでしょうか?

 

1)長編映画作品を少なくとも1本以上プロデュースし、

  2都市以上で公開されていること。

  またそのうちの1都市は、人口100万人以上の都市であること。 

  劇場公開は最低1週間以上。


2)少なくとも1本以上の長編映画プロデュース作が

  NetFlixBlockbusterなどのVODプラットフォームで配信されていること。


3)少なくとも1本以上の長編映画作品をプロデュースし、

  以下のメジャーな世界映画祭で上映されていること。

  AFI Fest、ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭、

  NY映画祭、サンダンス映画祭、テルライド映画祭、

  トロント映画祭、トライベッカ映画祭、ベネチア映画祭。

 

この3つの要件のうちひとつを満たしていれば、

アナタも第一関門通過です。


なんか1)より2)の方が、3)より2)の方が、

つまり2)が一番敷居が低いような気がするんですけど…。


どうも最近では、インターネット・ムービーのプロデュースでも、

場合によってはメンバーとして認められることがあるということです。

拘っているのは「長編映画」。

予算の規模も関係ないみたいです。

 

しかし、ここからが難関です。


PGA
メンバーから1名、映画業界から2名の
「推薦人」を立てなければなりません。

しかも「ちょっと書いてよ、よろしくね」とは言えず、

ちゃんと過去にその推薦人たちと同じ現場で
一緒に製作をしたことがある、ことが必要。


つまり「履歴書」に、組合のお墨付きが必要なわけですね。


それなりのソサエティに入ってなければムリです。

思わず『ソーシャル・ネットワーク』で観た、

ハーバード大の秘密結社が思い浮かびます。

 

「この推薦状がついてない応募用紙は、
 検討せずに速攻で返却します」、
とキッパリ言いきってます。
ひゅう、上から〜。


…ですが、だからこそ、

プロデューサーたちが認めた作品だからこそ、
受賞するプロデューサーは嬉しさもひとしお、なのでしょうね。
 

さて、そんな厳しい審査?を通った、

商業的にも芸術的にも成功している

世界を代表するプロデューサーたちが選んだ今年の1本が、

『英国王のスピーチ』です。


本国の英国アカデミー賞では、

最多の14部門にノミネートされているので、

クオリティも間違いなさそうです。

あとはストーリーがいまの日本の風土に合うのかどうか?

 

個人的にはスコット・ヒックスの『シャイン』で

アカデミー賞を受賞したジェフリー・ラッシュが

得意の怪演ぶりを発揮してそうで、公開が楽しみです。
気がつけば、今年は、
洋画で「そうだ、映画館、行こう」と思う作品が多いですね。
やっぱりポップコーンをほお張りながらアメリカ映画を観るってのは、
わくわくするもんです。
あ、イギリス映画か、これは。
じゃ、私が映画館主だったら、
銀食器でのアフタヌーン・ティー付上映にします。ハイ。
Souce: indieWIRE