top > blog > Distribution > 27.11月.2013

天才グザヴィエ・ドランの夜明け

By Sebastien Chesneau, Head of Sales, Rezo Films International
セバスチャン・シェノー/海外配給会社Rezo Filmsのインターナショナル部門、ヘッドプロデューサー。

無名だったドランを発掘し、初監督作『マイ・マザー』、2作目『胸騒ぎの恋人』の世界配給を担当。
その後の成功の足がかりとなったカンヌ映画祭監督週間部門へ出品し、三冠受賞と世界20カ国以上へのセールスを達成。天才グザヴィエ・ドランの第一発見者であり、スターダムの陰の立役者。当時弱冠18歳だった新鋭ドランがいかにして世に船出したか?をインタビューしました。


Q1: グザヴィエ・ドランの初監督作『マイ・マザー』との出会いは?

A:カナダにいる友人と映画についてあれこれ語り合っているときに、彼がグザヴィエ・ドランについて教えてくれた。すぐに本人とコンタクトを取ってプレビュー用のDVDをもらった。それまでグザヴィエについては全く知らなかった。こういうことは海外配給をやっているとよくあることで、作品や監督について全く知識がゼロでも、傑作に偶然バッタリと出会うことがある。

すごくエキサイティングなことだよね。いつでも新鮮で、いつでも新しい出会いがあるんだ。

 

Q2: 『マイ・マザー』を見たときの第一印象は?

A:まさに文字通り「ぶっ飛んだ」。普段見ている映画とは明らかに一線を画した傑作だった。斬新であると同時に、若い監督なのに、抑制が利いていて、とても成熟度が高い作品だと感じた。グザヴィエは真の努力家で、自分のやっていることに全身全霊を注いでいるタイプだ。

例えば、こんなエピソードがあった。海外配給のために、ポスターのデザインを議論していたときのことだ。僕は、ちょっとそのアートワークが気に入らないでいた。すると翌朝には、グザヴィエは自分でポス撮り(ポスター用の写真撮影)をしてポスターに使えるような写真を持ってきた。さらに、新作企画の脚本を2つ、持参してね。一言では語れないグザヴィエだけど、強いて表現するなら、熟練していて、インテリジェンスに富み、誠実で、なにより自分の作品と芸術に全てを捧げている。
まったく、スゴいクリエイターだよ。

 

Q3:初監督作『マイ・マザー』と2作目『胸騒ぎの恋人』を海外配給することになった経緯は?

A: NYの映画祭に参加するのでアメリカへ飛ぶ機会があって、その時、どうしても早くグザヴィエ本人に会いたくて、何度かメールのやりとりをした。2日後の午後6時にモントリオールのカフェで落ち合う約束をしたが、ニューヨークからモントリオール行きの便が大幅に遅れてしまって(なんと8時間もかかったんだ)、ようやくついたのが6時4分だった。その時、初対面でグザヴィエが僕に言ったのは「4分遅刻だね…でもいいや、君はフランス人だから!」。

そして彼のプロデューサーと3人でディナーの席に着いて、映画について、そしてグザヴィエの次回作についていろいろと語り合った。彼の才能はとにかく一言では語れないほど衝撃的で、自分の2作目、3作目がどういう展開をしていくか、確固たるヴィジョンを持っていた。たった18歳とは思えなかった。「この子は、ただの空想癖なのか、それともホンモノの天才なのか?」と何度も自問したよ。結局「天才」と信じることにした。グザヴィエと映画についての考え方からなにから意気投合して、その日、デザートが運ばれてくる前に、契約にこぎつけたんだ。2本目をREZOがハンドルすることになったのも、自然なコラボレーションの流れと言える。

 

Q4:2009年のカンヌ映画祭/監督週間に『マイ・マザー』が出品されてワールドプレミアされたとき、国際映画祭のプログラマ―や、各国の配給会社のバイヤーの最初の反応はどうでしたか?

A:実は正直に言うと、映画のバイヤーに「新しい才能」を紹介して認めてもらうのは、とてもハードルの高いことなんだ。映画祭のプログラマ―たちは作品を絶賛していても、ディストリビューター(配給会社)はもっと慎重だからね。海外で外国作品として彼の作品を公開するのは、とてもチャレンジングであることはこちらも理解している。カンヌでお披露目される前は、「才能ある新人というだけじゃなく、必ずすぐに大物監督になるから、何も言わずにとにかく見て欲しい」ということを伝えるのに、かなりのエネルギーを消耗した。それでも最初の反応は「それで?18歳の高校生が作った映画を買えというのかい?どうぜ文化祭レベルだろう?」といった冷ややかなものだった。

ところが、カンヌでの初上映の直後に、ミラクルは起こった。バイヤーからのフィードバックが信じられないくらいポジティブだったんだ。その後は映画が一人歩きして、世界中の映画祭に招待され、最高賞をいくつも受賞するに至ったよ。

 

Q5:では、海外の批評家の反応はどうでしたか?特にフランスの評論家は手厳しくて有名ですが。

A:批評家たちからは絶賛しか出てこなかった。映画業界で最も権威のある業界紙「ヴァラエティ」では「観客のために作られた本物の映画」という最高の賛辞が出たくらいだ。グザヴィエと出演している俳優たちは、カンヌ映画祭の期間中、あちこちでひっきりなしにインタビューを受ける結果になった。
おかげでフランス国内での興行も大成功で、初監督作品から世界20カ国で配給された。カンヌ映画祭は、グザヴィエのその後のキャリアを語るに欠かせない素晴らしい船出の場となった。

 

Q6: その後のグザヴィエの世界的成功、そして彼の将来性をどう見ていますか?

A: グザヴィエ・ドランの作品について人が語るとき、必ず「ドランっぽい」と言われるようになった。作品を語るときに「ウディ・アレンっぽい映画」というリファレンスはよく聞くけど、それに匹敵するオリジナリティが認められた証拠だ。そう称される監督はめったにいないものだから、素晴らしい評価だと思う。彼の明るい未来はもう約束されたも同然だ。彼の頭の中にはまだまだたくさんの企画のアイデアが詰まっている。

4年前に僕が彼について語っていたことが、すべて現実になってきているだろう?

 

Q7:最後に日本の映画ファンにメッセージを。

A:過去15年間、日本の配給会社とは密接に仕事をしてきたので、日本の観客がどんな映画を見たがっているか?は判っているつもりだ。
グザヴィエ・ドランの作品は、本当にオススメの傑作揃い。これから必ず注目を集める監督で、ブレイク必至。注目すべき監督の一人なので、ぜひ乗り遅れずに先取りチェックしてもらいたいと思います。

映画を観て感想を送ってくれたら、必ずグザヴィエ本人に伝えます。(その場合、日本公式facebookへメッセージを送ってください)