top > blog > film festivals > 15.12月.2012

ドバイ映画祭2012|『希望の国』いよいよ上映!

12/14本日、いよいよ『希望の国』の中東プレミア、第1回目の上映日でした。ザンネンながらまさかのドタキャンの園子温監督不在にもめげず、ほぼ満席のお客様。ありがたや。まじ、ありがたや。ご来場いただきましたみなさま、本当にありがとうございます。映画祭のプログラマーは、十数年前『自転車吐息』をロンドンの映画祭で上映した際に園さんに会ったので、大きく成長した監督との再会をとても楽しみにしたので残念ですとコメント。代理でメインプロデューサーの国實瑞恵さんが舞台挨拶に立ち、この映画を作った理由をあらためて表明し、上映開始。映画の企画開始は1年以上前でしたが、そのときに国實さんが、出資者に対して力強く訴えていたメッセージを私も久しぶりに思い出して、そうだった、このことに賛同してイギリスも台湾も出資を快諾してくれたのだった、と思い出し、ちょっとじーんとしてしまいました。

國實瑞恵プロデューサーの舞台挨拶をご紹介します。
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“時”には”未来”があります、人は未来に希望を持つことも出来ます、しかし同時に人は未来に対して不安も感じざるを得ません。まことに不思議なものであります。そういう未来が突如として現在に変わる。現在に変わった未来が、さらに記憶に変わって過去になる。その記憶もだんだん遠ざかって行く。

1986年4月26日チェルノブイリ
2011年3月11日福島

これらの日を、私たちは忘れないでいることが大切だと思います。そしてこれからは世界中の人々は、自分で考えて、自分で選択して生きていかなければならない時代だと思います。

「誰も責任が取れない原発というとんでもないゴミを未来に残したまま死ねない」という気持ちでこの映画を作りました。

2011年3月11日福島の原発事故から数年後のある架空の場所で、人々の生きることの選択のドラマです。

最後までご覧いただけましたら幸いです。
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上映中は、あちらこちらで笑いも起こりつつ、途中退席者もなく(アラブではめずらしいことだそうです)、なんというか、場内は緊迫と静謐が混ざり合った雰囲気。ラストあたりではすでに泣いている人もいて、温かいムードの上映となり、私としてはかなりほっとしました。だって、アラブ諸国のようにエネルギーもありあまり、お金もありあまり、地震の心配もない、となると、あまりにも今の日本=希望と絶望の国とは置かれた環境が違いすぎるのだから、映画の本質的なところも理解は難しいのでは?と懸念していたものですから。

終映後には、なんと、私に向かって「グッジョブ」サインを送ってくれるひとや、泣きながらお辞儀をしてくれる人がいて、大感動。監督不在なのでQ&Aはやらなかったのですが、会場外にいた私たちを捕まえて、政府関係者の方が「サウジでもUAEでも、エネルギーが底をついてきて、これから原発を作ろうという動きがあります。そんな社会に対してとても刺さるメッセージをもった作品でした。もし関係者に見せられる機会があればぜひ見せたい」と言っていただいたので、連絡先とカタログをお渡ししました。そして、インドから来たという2人組の男性も「インドでも南部の海岸線に原発がある。他人事とは思えないストーリーだった。この話は真実なのかフィクションなのか?年配の世代はみんなこんなに悲観的なのか?」と矢継ぎ早な質問を受け、すべて監督が取材した真実にもとづいた上で構成したドキュフィクションであることを伝えると、本当に驚き、共感と同情を表現してくれていました。そしてあるドバイのローカルの男性は「いままで見たなかで一番よかった」とコメントしてくれて、もう感無量です。

アラブじゃあんまり関係ない話なんだろうなぁ、程度に構え、あまり期待していなかっただけに、素直な驚きとともに、心底嬉しくて、ちょっとうるっと嬉し泣きしそうになったくらいです。

やっぱり私はこういうリアクションを園監督ご自身に受け止めて欲しかったし、ドタキャンの理由は「極度の精神的疲労」とご本人からオフィシャルに発表されていましたが、せっかく素晴らしいメッセージを世界に伝えるチャンス、そして世界からのリアクションを聞けるチャンスを棒に振るなんて、作品のテーマがテーマなだけに、ほんとうにもったいないなぁ、と心底思い、そして映画祭関係者、観客も監督に会えることを本当に楽しみにしていてくれたようなので、心底残念に思いました。監督からは「海外の映画祭には今後は一切参加しない」というコメントも来ていましたが、世界中に監督の作品を楽しみにしているファンがいるので、とても残念に、そして淋しく思います。

以下は、園監督からのオフィシャルコメントです。

【今回の映画において、幾多の困難を乗り越えて完成し、その後も様々な障害と困難がありました。今日、わたしは極度の精神的疲労により欠席せざるおえなくなりましたが、皆様に見て頂けるのは嬉しいです】

明日は2回目の上映があります。明日もしっかりとアラブのみなさんにこの作品のメッセージを伝えてきたいと思います!

ドバイ映画祭に選んでもらったからこそ、日本人にとって大切な映画『希望の国』を、ここ遠い中東でお披露目できたので、遠かったけど、本当にドバイに来てよかったな、と思いました。