ドバイ映画祭2012|アジア・アフリカ短編コンペから見えてくるニッポン
アゼルバイジャン『WHITE BLOOD』ミルク、生と死、命の連鎖
日本『サイケデリックファミリー』家庭内暴力、母、息子
キルギス『SILENCE』雪の中、生活、静寂、人それぞれの生活環境
スリランカ「I TOO HAVE A NAME』現代ランカ社会における女性の立場
韓国『SUFFOCATION』閉塞感、偽わり、自己憐憫
ザンネンながら、日本が一番、サウンドデザインと照明のクオリティが劣っていました。卒業制作だから仕方ないのかな?でも海外映画祭のコンペでは「これは卒制だから仕方ない」とは思ってくれないのでザンネン。
あと、最近つくづく思うのだけど、近頃の日本の若手監督の描くものは、半径1Mの個人的な問題が多い。あまりにもパーソナルな映画はユニバーサルにはなれないので、もし国際映画祭を狙っている若い方がいらっしゃいましたら、もう少し広い視野、視点で人間や社会、宇宙の何かを切り取ることをおすすめします。世界中の誰が見ても、「あるある」とか「そうだよなぁ」とか思わず感じてしまう映画です。
5本のうち、個人的にはアゼルバイジャンの『WHILTE BLOOD』が力強く語りかける映像とストーリーでよかったと思います。シンプルではありましたが、人間が生まれて初めて口にするおかあさんのおっぱいを「白い血」と呼ぶことから、命について、輪廻について、母性について、監督のビジョンが、しっかりと伝わってきました。
キルギス、スリランカも語り口はシンプルだけど力強い映画。2作品とも女性監督の作品でした。日本の女性監督にありがちな、優しい、またはヤワな映画ではありませんでした。
日本の作品は、映像も音楽もなんだかオサレに仕立てていたけど、親戚の話がネタ元だったりしたので、監督のビジョンが感じられず、ちょっとガッカリしました。実際Q&Aでもあまり何をしかったのかうまく伝わってきませんでした。
韓国の『窒息』は、社会の閉塞感を人間が窒息死する事件とうまくオーバーラップさせて、若いのに「練れてる」短編映画でした。政府の助成金が多いのか、サウンドデザインもリッチで、また監督の演出もまだ若い割には、ずいぶんとこなれた感じでした。
そりゃぁ、日本を応援したいけれど、監督自身のビジョンに歴然と差がついてしまっていては、仕方ないな、と思った次第です。でも、監督はドバイに来て、せっかくいろいろと刺激的な体験をして日本に帰るので、ぜひいろいろと吸収して次回作へつなげていただきたいと思いました。次を楽しみにしたいと思います。