ストックホルム国際映画祭「希望の国」スカンジナビアプレミア

November 15, 2012, STOCKHOLM

昨日は、トウキョウで脳科学者の茂木健一郎さんと園子温監督のニコ生ライブ対談がありましたが、私は遠く北欧ストックホルムからライブ視聴。モギケンの司会がスベッてるのでは、というきびちい突っ込みがあったようですが、おそらく諸般のっぴきならない理由があってのことと勝手に察し、私はむしろ、茂木さんのあくなき好奇心とあくまでもフェアな博愛の精神に、ほほうと唸っておりました。ネット上に流れてくるコメントはいつも通り笑ってしまうものが多かったですが、細かいことはさておき、全般的には茂木ファンと園ファンという対立軸が実に面白いトークセッションでした。「事実はひとつ見方はふたつ」。ふたりとも目的と伝えたいことは同じだけど、アプローチが違う、こういうクリエイターのぶつかり合いは、ぎりぎりの危うさを孕んでいて、傍観者である私たちをワクワク(ハラハラ?)させてくれますね。

さて、ニコニコ終了後、こちらストックホルムでは、19時から「希望の国」のスカンジナビアプレミア上映の第1回目がありました。会場はそれほど大きくないライブラリーセンターにあるスクリーンでしたが、おかげさまで満席(定員100人ちょっとか?)。いまのところ私はトロント、釜山、台湾、日本で観客のみなさんと一緒に客席で作品を見ていますが、ストックホルムのお客さんの反応は、私に「日本は極東である」ということをじわじわと実感させるものでした。北欧って、遠いな〜。やはり、隣国、韓国や台湾のリアクションとは、一線を画す距離感があります(精神的な距離と物理的な距離感の両方です)。

もちろん、=リアクションが薄い、ということではありません。終盤には、日本と同じように会場内からすすり泣きが聞こえたり、慌てて鞄からハンカチを取り出す人も多く見かけました。

お国柄、としか言いようがないのですが、まず、前提として知っておいていただきたいのが、スウェーデンを始め北欧諸国は、男女平等の国だということです。激しく平等です。すさまじく平等です。いいか悪いか迷ってしまうほどの徹底した平等です。

例えば、スウェーデンにはキャバクラや風俗はほとんどありません。ご存知60年代に日本でも騒がれたスウェーデン式フリーセックスは、日本で一部曲解されているようですが、決して「誰とでも自由にセックスをしていい社会の雰囲気」のことではありません。女性だって、男性と同じく、快楽を声に出して主張すべき、という意味です。ですから、男性が風俗に通うなどもってのほか、他の女と愉しむくらいなら、なぜ私じゃだめなの?どちらかというとそういう感じ。とにかく女性の主張が強い国なのです。夫婦は当然に共働きで、赤ちゃんも2歳になったら、必ず妻は職場復帰。たとえば2日間女性側の夕食作りが続いたら、「何考えてんの?ありえないんだけど!」と烈火の如く怒りだす。そういう「平等」です。(全部、こちらに住む通訳さんからのウケウリ)

ちょっと話がそれました。「希望の国」で神楽坂恵さん扮する「嫁」は、夏八木勲さん扮する「お義父さん」を「おとうさん」と呼びます。字幕でも、日本の田舎町のコンサバな関係性を重視し、そのまま「Father」と訳しました。おそらく、ここが一番スウェーデン人にとっては、登場人物の人間関係が混乱するポイントだったのでは?という指摘がありました。「え?Fatherってことは、この妻の実家の父なわけ???」ここを誤解すると、ちょっとあのファミリー内の感情の動きが理解しづらくなるのでは、と懸念します。

これ、瑣末なことですが、案外大きなポイントだったります。そして、これこそが、国際映画祭へ出品する醍醐味というか、カルチャーの大きな違いを、こんな小さなところにハッと発見することが、いちいち面白いのであります。

上映終了後は、次回作の編集中につき来られなかった園監督の代打として、私がQ&Aに立たせていただきましたが、これまた、ドイツ、アメリカと多様な国からの質問が相次ぎ、大変に盛り上がりました。作品に関すること、というよりも、やはり原発問題に関する話が多かったです。

かいつまんでご紹介すると、こーーーんなに日本から遠いスウェーデンでも、事故当時は、マスコミがちょっと大げさに騒ぎ立て、スウェーデンにも放射能が飛散してくるから、と、マスクや外出禁止を叫ぶ報道があったとか。

映画の中でも、嫁が「だって、空気でしょ?水みたいに堰き止められないんだから!」と叫んでいますが、いくらなんでも、日本と北欧で空気汚染が感染するかな?と、私は懐疑的でした。

これをうけて、あるアメリカ人女性が、「マスコミが大げさに言っているとは思わない。だって、地球はこーんなに狭い。風に乗って放射能がくることは十分考えられる」。とやや怒り気味に主張。

私としては、「まぁ、その可能性は高いけど、そんなことより、つい最近、フランスの海岸線にある原発の事故隠しとか、そっちのほうが、みなさんにはよほど関係の高い話なのでは?」とお伝えすると、このことはダーレも知らなくて、

で、別の方は、「確かにスウェーデンのマスコミも、大事な情報は隠している」と。「世界中どこでも原発は利権だから、簡単に「やめればいい」という話ではない」という意見も飛び出しました。私が「ドイツは日本よりも先にさっさと脱原発宣言しましたね?」と問いかけると、ドイツ人が「あれはフェアじゃない。自分たちだけが、「はい、やめました」とか言ってるけど、じゃぁ、エネルギーはどこからくるか?といえば、お隣のフランスの原発の電力を買うわけだから、解決になってない」、「というか自分さえよければという判断は間違っている」などなど、かなり熱いディスカッションとなり、有意義でした。ほーら、こんなに盛り上がる旬のトピックなんだから、世界中の配給会社も恐れてないで、どしどし、もれなく権利を買ってくれーというキモチにもなっちまいましたね。うふ。

で、「ははーん、世界中、問題は同じなのだな」、と理解した私は、「日本は広島、長崎、福島と3回も核の恐怖を味わい、その都度立て直してきた(福島はまだ途中ですが)世界で唯一の国。おそらく私たちの得意な科学分野の道で、新しいエネルギーを世界に先駆けていち早く開発し提案することが、世界における日本の役割と責務であり、多くの犠牲者の方々から学ぶべき教訓のひとつではないかと感じている」と締めくくりました。

いま中学生や高校生の子供たち、福島で育った子たちの中から、近い将来、世界に通用するニューエネルギーの発明をしてくれる人が生まれることを、【ノーベル賞】の国、スウェーデンで強く願いました。

それが実現してこそ、園監督とプロデューサーたちが、逆風に負けずに「希望の国」を「いま」制作し、緊急号外として世界へお披露目している甲斐があるというものです。

さて、今日は、デヴィッド・フィンチャーの「ドラゴン・タトゥーの女」のロケ地を巡る予定です。ダニエル・クレイグがめっちゃ寒そうだったあの北欧のコテージの雪は、なーんと、スチロールだと聞いて、「映画にうまいこと騙されたー」と、ガックリきているストックホルム滞在3日目です。

映画祭ってほんとうにいいものですね。さよならっ、さよならっ、さよならっ。

STOCKHOLM INTERNATIONAL FILM FESTIVAL