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そろそろカンヌ、あれこれ

March 23, 2012

チェコ→ロンドン→パリ→ムンバイ→香港と続いた出張も、いよいよ終了、
ようやく今日、おうちに帰れます。グルメ旅ではありましたが、
やっぱり、日本人はらーめんが食べたいのです。
着いたら羽田で早速食べちゃおうかなと妄想してみたりして。

さて、一息つくひまもなく、帰国したらすぐにカンヌ映画祭モードに突入です。
カンヌ映画祭と、併設されるMarche du Filmには、世界中の映画業界関係者が
ほぼ全員、ニースに上陸すると言われているくらい、まさに最大のお祭りなのです。
映画のお祭りでもあるし、映画の商売でのお祭りでもあります。
2週間の期間中、マーケットの方がアクティブに動くのは最初の1週間。
取引高も世界最大。売る方としては、やはり一年で一番気合いが入るマーケットです。

さて、売り買いの成否を決めるコンペ作品の記者発表は、今年も変わらず4/18というわけで、
そろそろ、コンペ作品(またはオフィシャルセレクションとして「ある視点」の
セレクションも含まれます)に「いちばん近い」作品の噂が流れてきました。

ここからの2週間は、世界中のコンペ狙いのセールスエージェントが
腕にヨリをかけて、選考委員にロビーイングします。熾烈な戦いです。蹴落とし合いです。

まずは、Wes Andersonの MOONRISE KINGDOM は、オープニング作品として
既に発表されていますので、いっちょ上がり。相変わらず予告編がワクワクします。

さて、以下が、水面下の戦いの作品たち。
プレミア誌の記事に書かれている下馬評のトップは、フランス、ジャック・オディアールの新作
『A taste of lust and bone』。これはほぼ100%間違いないと言われています。

なんで、確率まで判るんでしょうか?もちろんかなり角度の高いインサイダー情報(敢えて流布する場合もある)にプラスして、フランス国内の配給状況から推測しているのであります。

この作品は、もともとは今年の10/24公開予定です。
が、なぜか突然、最近になって、5/17に公開日が急遽前倒しになりました。
カンヌ映画祭は、5/16から27に開催されます。
もうみなさんも、理由はお分かりですよね?そうです、そういうことです。

かつてはカンヌ嫌いで、絶対に来ないと言われていたウディ・アレンですが、最近では新作は、カンヌでお披露目、というのが定番になってきました。というわけで、『To Rome with Love』も
当確です。もしかすると Woody Allen, A Documentary というアレンに関するドキュとセット販売かもしれないそうです。そして日本からは、若松孝二監督の 11.25自決の日 三島由紀夫と若者たちの当確がささやかれています。

ほかにはアラン・レネ、デヴィッド・クローネンバーグ、ウォルター・サレス、ミヒャエル・ハネケ、アンドリュー・ドミニク、パオロ・ソレンティーノ、テレンス・マリック、フランソワ・オゾン、ミシェル・ゴンドリーらの名前が挙がっていますが、私が注目しているのは、
日本で撮影したアッバス・キアロスタミの『The End』、9年ぶりの復活、レオス・カラックスや
ニコール・キッドマンを起用した初のパク・チャヌクの英語映画『Stalker』などなど。

個人的には、3年前に弱冠19歳で『I Killed My Mother』で監督週間をあっと言わせたフランスの新人、Xavier Doranが、昨年の監督週間出品を経て、3作目で、やはり順当にコンペ監督にのし上がってきたことに「やはりな」と膝を打っています。彼の存在感は、フランス映画の新しい時代を示唆しています。そしてたとえフランスで最大に注目されている監督であっても、いきなりコンペということはあり得ず、登竜門である監督週間や、コンペ以外のある視点部門から順当に階段を昇っていく、というカンヌの見えない掟も証明しています。このことは日本では業界内でもあまり知られていない様子ですが、いきなりコンペなんて、よほどの天才映画じゃないと起こらないことなんですよ。よくそういう三段抜かしの要求を受けますので、ここではっきりと宣言しておきます。三段抜かしでコンペに入る作品なら、さらに三段抜かしでいきなりアカデミー賞にノミネートされますよ。それくらいのレベルの話だと思います。日本の監督もそうです。黒沢清監督は、最初にTV映画がある視点で受賞し、2年後にアカルイミライがコンペに入りました。今やコンペの常連の河瀬直美監督も最初は『萌の朱雀』が監督週間でカメラドール賞を受賞し、7年後に『沙羅双樹』がコンペに入りました。三池崇監督も『牛頭』が2003年に監督週間に入り、8年後の昨年、『一命』がコンペに選ばれています。やはり、どんなに日本で有名監督だとしても、世界でいきなり有名ということはありません。名前と作品を世界中にどんどん露出して、とにかく存在を知ってもらわなければネクストステージには到達しないのだと思います。そういう意味では、園子温監督は、これまで10年以上、いわゆるファンタスティック系と言われるジャンル映画の祭典の常連で、世界中に固定ファンもたくさんついています。そして、今、まさに世界の階段のネクストステージを駆け上っている、その最中だな、と実感しています。

ところで、逆にこの時点で、すでに落選確実というのもあるそうです。
ウォン・カーワイがもう1年以上も編集し続けている(?)ブルース・リーの伝記映画、『The Grandmasters』、去年『Drive』で世界をあっと言わせた、ニコラス・ヴィンディング・レフィンあたりが、今回はザンネン賞だそうです。あくまでもプレミアの独断と偏見による予想なので、こればかりはどうなるかわかりません。

2年前のアピチャポンの『ブンミおじさんの森』の選考結果が、記者会見前日の夜中に電話で来たことは有名な話です。4/18まで、なにが起こるかわかりませんね!楽しみです。

 

Souce PREMIERE