今年は映画のヴィンテージ・イヤー
Sunday, April 3, 2011
Tree Of Life by Terence Malick
さて、4月に入り、日本映画にとっても、決して他人ごとではない、
カンヌ映画祭がこっそりと近づいて参りました。
応募締め切りはずいぶんと前でしたが、
やはりあちらこちらで、ちらほらと、いろんな噂を耳にします。
この手のいわゆる「業界の噂」に振り回されると、
ろくなことがないので、ほとんど素通りしています。
とは言え、世界最大の映画の祭典、カンヌ映画祭。
今年はどんなラインナップがコンペ作品として並ぶのか?
気になる季節です。
なんといっても、この週末あたりは、
完全に「フタが閉まる」頃ですから。
すでにお断りレターが来たプロデューサーもいれば
いまだドキドキしながら待っているプロデューサー、
すでに内定をもらってスターの出張スケジュール調整など
準備に追われているプロデューサーが世界中にいて
すべての結論が出るのが今日あたり…ということになります。
あれこれと推測してもしかたないのですが、
世界のインディのフィルムメイカーたちは、
北米マーケット狙いは、1月のサンダンス映画祭、
NON-US作品はやっぱり5月のこの映画祭を目指して
作品を創っているケースが多いので
どんな作品が候補にあがっているか?を俯瞰するのも、
世界的には今年のトレンドを測るいい指標でもあるのです。
というわけで、今年の注目企画に目を向けてみたいと思います。
今年はとにかくヴィンテージ・イヤー。
ペドロ・アルモドバル、デヴィッド・クローネンバーグ、
ウォン・カーワイ、ダルデンヌ兄弟、ラース・フォン・トリア、
アキ・カウリスマキ、ベラ・タールなどなどが新作を準備していて、
これだけでもカンヌ映画祭のコンペの半分を占めてしまうほどだと
とある業界紙が年末にすでに騒いでいたくらいです。
ウォン・カーワイの新作は、ブルース・リーのマーシャル・アーツの
師匠だったと言われているIp Manの人生を描いたストーリーで、
ドニー・イェン主演ですでに映画化されていますが、
カーワイバージョンは、トニー・レオンがIp Man役。
現在、トニーは死ぬほど武術の訓練中だそうです。
大人になって『初恋のきた道』ほどの初々しさが欠けてしまった
チャン・ツィーも出ています。
映画は完成しているようですが、香港での公開日は決定していません。
もちろん!カンヌに選ばれた場合を想定して、
わざと決めないでいるのだと思います。
タイトルは『The Grandmasters』(勝手訳:スゴイ師匠たち)。
タイトルでだいたい中身が判りますね。
スペインの巨匠、ペドロ・アルモドバルは、
旧友アントニオ・バンデラスを起用し『The Skin I Live IN』という新作を準備中。
交通事故で妻を亡くした整形外科医が、新しい皮膚を開発することに
囚われていく様子を描いていますが、これはもう企画の段階で
ほとんどの国に売れてしまっています。サスガ。
クローネンバーグの『A Dangerous Method』は、
ヴィゴ・モーテンセンが主演、ミヒャエル・ファスベンダー、
キーラ・ナイトレイ、ヴァンサン・カッセルが共演。
どう考えても地味ですが、プロデューサーは、
世界のキタノの『Brother』や『Gohatto』、最近では『おくりびと』のリメイク、
三池崇監督の『十三人の刺客』のリメイクを企画した人です。
クローネンバーグの『Crash』もやってますから、
旧知のおなじみさんですね。
アキ・カウリスマキは2006年以来5年ぶりの新作『Le Havre』で
カンヌへカムバックを狙います。フィンランドの小さな町に住む靴の修理工が、
黒人の難民の子を受け入れるヒューマン・コメディです。
オスカー監督、ラッセ・ハルストルムも『Salmon Fishing In The Yemen』
という新作を準備中。ちと懐かしめの名前のジャン=ジャック・アノーは、
『Black Gold』という歴史ものをチュニジアとカタールで撮影中。
予算は約50億円と、ハイバジェット。
おととしのカンヌであまりにも激しい描写に観客が騒然となった
『アンチクライスト』が日本でも公開中のラース・フォン・トリアは、
キルスティン・ダンスト,シャーロット・ゲンズブールで
『Melancholia』を撮影中。“世界の終わり”から始まるこの映画は、
サイコロジカル・ディザスター・ムービーだとか。
すでに25カ国に売れていますが、デンマークでの公開日が5/26ですので、
十分にカンヌ狙いのスケジュールです。
この他にもローランド・エメリッヒやリン・ラムジー、
スティーブ・マックイーン、そしてマドンナなどなどの新作が並ぶなか、
2011年期待の新作に日本からラインナップされているのは、
是枝監督の『奇跡』です。
3/12の九州新幹線全線開通に合わせて公開するPR映画だ、
な~んて昨年末までは揶揄されていたようなのですが、
そこはさすがカンヌ常連、フランスで大人気の是枝監督。
今年に入って、フランスの大手セールスエージェントの
ワイルドバンチが買付け、映画祭プッシュの後ろ盾となったあたりから、
ガゼン、カンヌ入りの角度が高くなってきたようです。
だから6月公開に延びたのかどうか?は知りませんが、
それにしても、オダギリジョーがまえだまえだのパパかぁ…。
私生活でもパパになったばかりのオダギリさんですから
きっと新境地を見せてくれることでしょう。
さて、これらのカンヌ常連さんたちの他にも
強力な新作が目白押しのさすがヴィンテージイヤー。
フィリピンのブリヤンテ・メンドーサの『Prey』が、今年の
フィリピン映画の最高傑作ということで、カンヌ進出が有力視されているとか、
ナンニ・モレッティ、ガス・ヴァン・サント、アレクサンダー・ペイン、
アンドレ・テシネ、ロオ・イェ、ペネック・ラタナルアンなんかも
有力視されているらしいし、トッド・ヘインズの『Mildred Pierce』は、
なんと5時間の超大作で、これもカンヌ狙いだとか。
(でもこれ、HBOのテレビ映画なんだけどナ。
ケイト・ウィンスレットなんか出てるし、出来がいいのかな?)
とまぁ、いろいろと噂されておりますが、
特に根拠のある話でもないので、
聞きながしておいてください。
4/14には、選出作品が正式に発表になります。
ちなみにオープニング作品は、ウッディ・アレンの
『Midnight In Paris』が決定しております。
他、去年のカンヌに出るといわれていて
かな〜り完成が延期になっていた
ブラピ主演、テレンス・マリック監督の
『The Tree Of Life』もオフィシャル・セレクションとして
すでに発表となっています。
『The Tree Of Life』は、
1950年代を舞台にしたブラッド・ピットの3人の息子たちの
人生を描いたお話らしいのですが、
まぁ、小さい頃はブラピ父さんを中心に
3人の兄弟それぞれにいろいろありましたと、
で、当時11歳だったジャックが大人になってショーン・ペンになって登場し、
いかに出生のトラウマを乗り越えて、家族や両親を真に理解していくのか?
といったようなストーリーらしいデス。今なら許せる、あの時の父さん…みたいな?
映像を見る限り、宇宙の真理みたいな哲学が関係してそうな気配。
ガイヤパワーを見せつけられている今の時代、
生まれた意味とか、他者との関係性、大きな自然の流れとの関わりを見つめ直すような
テーマの映画は、観たいぞ、そりゃぁ観たいじゃないか。
やっぱりオープニング作品だけあるな。
というわけで、
ポスターと予告編と「♪モルダウの流れ」はなかなかよさげです。