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国際共同製作、それは罠だ!

Tuesday 15, February 2011
the last day in BERLIN
Eliot.jpeg 
隣のブースでは、中国初の3Dアニメをセールス。
飛ぶように売れとる様子です。

本日、マーケット最終日。


ってか、マーケット自体は18日までありますが、
私だけ勝手に最終日。

というわけで、朝は、不思議なシンクロニシティを起こしている企画について、
ブレックファストミーティングをひとつこなし、あれやこれや片付けをして、
空港にGO!です。

こういう仕事をしているせいか、
はたまた、ANAの成田クルー達に「こんにちわ」ではなく
必ず「Hello!」と言われてしまうようなザッツ東南アジアな顔立ちのせいか、
【外国が大好きで、ジンガイのボーイフレンドまたはexハズバンドがいて、
 海外ばっか飛び回っている外国大好きっ子キャラ】に思われがちですが、
本当は日本が大好きで、日本人が大好きなので、
海外滞在はできれば短ければ短いほどいい、んです。

そんなわけで、今回は「早退」できる結果が出せたので、
本当に嬉しい帰国の朝です。

今回の買い付けは、映画ではなく、アンペルマンのグッズもろもろ。
白金のショップでも買えるだろって話ですが、
ご近所の浜寿司さんに頼まれたので、現地版を大量購入。
引き換えにあのおいしい梅茶碗蒸しをゴチになるんだ!

さて今回のベルリン映画祭参加で、よくよく判ったことは

【ベルリンのコンペのセレクションって、ヘンっ!】

ということです。

アジアから唯一選ばれた韓国映画
『Come Rain、Come Shine』を観たのですが、
はっきり言って2時間の拷問です。
プロデューサーやセールス関係者はみんな既知の友人たちなので、
感想を言おうとすると、なんとも歯切れが悪くなってしまうのですが、
「なぜこれが?」という答えが2日経ってもでませんでした。

聞けば、脚本がすばらしく、主演のヒョンビンも、イム•スジョンも、
ノーギャラで出演しているとか。

そのみんなが絶賛する脚本が私にとっては大問題で、
突っ込みどころ満載だし、
リアリティを追求しているのか、ファンタジーなのか、
アンタたち、どっちなんだよ!的な倦怠期の若い夫婦の密室劇なんです。

話は離婚しようと決意している妻が
旅立ちの朝、嵐で外に出られなくなり、
密な時間を過ごしているうちにお互いの存在を認め直すという
かなりチープな設定なのですが、

まず、嵐ではなくただの小雨。
ぜんぜん、外出可能です。

この時点で、もうどうでもよくなってしまいました。

私がキライな映画のシーンに、
「ノビたラーメンを食べているシーン」
があるのですが、

日本というラーメン天国にあって、
いまどきのラーメン屋さんで、あんなにビロビロに伸びている、
ぶよぶよのラーメンを出す店があるか?というくらいノビたラーメンを
むりやり「ずずっ」とススっているのを観ると、
役者さんがかわいそうになります。
それ、吸えないだろって。

「ラーメンは役者さんもカメラもぜんぶ準備万端整えてから、
最後に出してあげればいいいのに!」なんて余計な事を考えてしまって、
もうその世界に入れなくなってしまうのです。

これは韓国映画なので、ラーメンは出てきませんが、
ダンナ(ヒョンビン)が作ってくれるズッキーニとナスのオサレ•パスタの、
なんとビロンビロンなことよ。
にんにく、炒めすぎだから!焦げるから!
と突っ込みたくなるくらい、ずーっと炒めてます。はぁ。

あとね、手際が勝負のイタリアンで、もたもたし過ぎなんですわ。
こりゃ、お料理した事ある人が、制作関係者の中にひとりもいなかったな、
なんて思ってしまいます。重箱突っ込み野郎みたいでなんですが、
もっと言えば、主人公にタバコを吸わせたまま5分も無表情で
窓の外を眺めさせないでください。みたいな。

アジア唯一のコンペ作品ということと、
ヒョンビン兵役前最後の作品のせいか、
満席で始まったバイヤー試写だったのですが、
最初の15分でほとんどが席を立ち、
最後まで残ったのは、私たちを含めて5人。
よく観たら、ほかの3人は明らかに、
寝てしまって終わった事に気づいてない人たちでした。

普段はなるべくどんな作品でもいいところ、見どころを見つけようと
前向きにがんばって観てますし、
それに、制作者はみんな大まじめで作っているし
その作品を信じているので、あまりいたずらに悪く言いたくありません。
でも、

こんなにヒドイ作品、久しぶりに観たので、
これはプロデューサーのためにも、
正直な感想を言うしかないな、と思っています。

同様に、期待値が高かった岩井俊二監督の『ヴァンパイア』も、
違和感満載でした。

無理して母国ではない英語や、
海外での撮影はするもんじゃないな、と再確認した感じです。
あと、プロデューサーから製作の裏事情を聞くにつれ、
やはり監督がただただやりたいようにやっただけの映画ってのは、
人に受け入れられないんだな、とも再確認。
唯一、岩井監督の愛が強く感じられたシーンは、
出てこなくてもなんの支障もない役として出てきていた蒼井優ちゃんの
すばらしく照明や映像にこだわった、とてもカワイイ表情のカット。

さてこのように、
現在キャッシュがどこにもないインディ映画界では、
目下、国際共同製作が花盛り。

しかしその先頭バッター的な作品のお披露目の場となったここベルリンでは、
「共同製作って、こういうハイブリッドや、
 各国事情が全部入りの映画だけはやっちゃだめなんだよなぁ」、
というお手本のような作品が、いみじくも揃ってしまいました。
残念ながら、タン•ウェイ主演の
アメリカ、韓国、中国合作ものの『晩秋』(こちらもヒョンビン)も、
あれもこれもで、中途半端な印象でした。
舞台はシアトル、タン•ウェイは中国人の服役囚、
ヒョンビンは、韓国人のコールボーイ、、、台詞は英語。
晴れときどきハングル、のち中国語。
のりもチャーシューも煮タマゴもネギもどっさり乗せた上に
さらに白ゴマをてんこ盛り・・・のような国際共同製作モノでした。


ラストに観たのは、サンダンスから話題沸騰の『マージンコール』
予想通りの、ウェルメイド(よくできた)会話劇。
ウォールストリートの証券が舞台でしたが、
人間模様がよく描かれていて、
このホン(脚本)がもてはやされるのはよく判りました、

が、

とにかく出てくる人がよく喋る映画なので、
松浦美奈さんクラスの字幕をつけないと、
ちょっとインテリすぎるので、
日本での公開は難しいかもな、と思いました。
何より日本のバイヤーさんはいませんでしたし。
例えば、恵比寿ガーデンシネマに名物高橋支配人がいたあの頃、
ハリウッド•インディの名作をラインナップしていた時代なら、
ヒット間違いなしです。

今なら・・・
うーん、日比谷シャンテで、インテリの20代後半カップル、
30代前半の男性客がメインってとこでしょうか。

決して、アート性の強すぎる判りにくい映画ではないので、
こういう作品を観られる環境がまた徐々に整っていけば
映画ファンとしては、嬉しいなと思います。

リーマンショック前夜の大リストラのシーンで緊張感高まるオープニング。
金融関係におつとめの方には、身につまされるお話でしょう、きっと。
人間描写がリアルですし、なんつたって、監督のお父さんは
メリルリンチ証券に40年勤めていた、ミスター•ゲッコーなんですからね。
『ソーシャル•ネットワーク』のエグゼクティブ•プロデューサーを買ってでた
ケヴィン•スペイシーが主演。やっぱり巧い!
スペイシーの演技だけでも、一見の価値あり!でした。

さて、それではこれにて
ベルリンからは、さよおなら。