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ハリウッドが大注目のMargin Callは ブラックリストだった?!

Sunday, 22 January 2011 


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ハリウッドのスタジオのエグゼクティブたちのうち、

開発部門に関わる人たちって、

なんと「一日に」10本くらいの脚本を読んでいる、らしいですよ。

もちろん、有能なアシスタントに読ませて、ふるいにかけたものを読むという

スクリーニングはやっていると思うけど、

それでも、砂漠で金の粒を探すのは、考えただけでも途方に暮れる作業。


しかも、そこはブルーオーシャンではなくて、

まわりにライバルがうようよしている

完全なレッドオーシャン。クランプトンだらけ。

 

さて、そんなハリウッドの煌めくエグゼクティブ達のてのひらから

こぼれおちてしまった脚本たちの中にも、

もちろん「素晴らしき見落とし」が埋もれていることがあります。

 

その1本が、今、サンダンスで話題の『Margin Call』。

いや、実はサンダンスでプレミアされる以前、

脚本段階からかなり業界では話題になっていました。
 


ハリウッドには、スタジオの開発部門のエライ人、

その優秀なアシスタントたちがリストアップする
「ブラック・リスト」が存在します。

 
blacklist.jpg 


このブラックリストは、


「プロデュースされなかった、ほんとうはスゴイ脚本リスト」
のことです。

 

J.C.チャンダーの『Margin Call』は、

2010年のブラックリストのトップ10に入る、噂の脚本でした。

そして、スタジオのセレクションからは漏れてしまいましたが、

あるインディのプロデューサーの目にとまり、

2010年度ブラックリストが世に発表される前に、製作が決定した

というシンデレラストーリーです。

 

この時、このスクリプトをピックアップ(拾った)のが、

エグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされている、

カシアン・エルヴス。

 

あっ!知ってるこの人!

 

今をさかのぼること6年前、

前職スタイルジャムの買付担当大臣だった私は、

ポリスの『インサイド・アウト』というドキュメンタリーに目をつけていて、

この映画を見るためだけにサンダンス映画祭へと飛んだのでした。


POLICE インサイド・アウト official site

そこで、まずはしっかりと完成品を見た後、
早速プロデューサーに直接交渉を申込み。

この時登場してきたのが、このカシアン・エルヴスでした。

確か当時は、ウィリアム・モリス・エージェンシーの

所属プロデューサーだったような記憶があります。

 

いや、これがなかなかのハリウッディな手ごわいタイプで、

おまけに、その交渉の場に、ドラムの(というか監督の)

スチュアート・コープランドもやってきたもんだから、

極寒のユタ州で、こちとらダウンとマフラーと
二重の手袋でモコモコしないと寒いくらいなのに

全身に汗はダラダラ流れてくるし、

ド緊張で舌がもつれてしまったことを思い出します。

言いたいことは、
コイツ、すげぇ、ヤリ手なんだぜ、
威圧感があんだぜ、ってことです。


もちろん、その汗の90%は、

あの、スチュアート・コープランドといま、話している

という夢のような事実のせいだったのですが。


IMG_2000.jpg 
スチュアート・コープランドが来日記者会見で、
エージェントは絶対NGって言ってたのに、叩いてくれちゃった写真。ナイス・サプライズだった! 


ちょいと話が逸れましたが、

そんなカシアンがイチハヤでツバをつけた『Margin Call』は、

昨年11月サンタモニカで毎年開催される業界人向けの映画見本市

American Film Marketでもホットなタイトルとなり、

作品は未完成ですがこの脚本だけで、17地域にその権利が売れました。


ドイツ、イタリア、オーストラリア、スカンジナヴィア、メキシコ、

ブラジル、カナダ、アルゼンチン、ラテンアメリカ、ペルー、

中国、ロシア、ポーランド、中近東、トルコ、ウクライナ、

旧ユーゴ/ルーマニアで公開されます。

 

こうしてある1本の映画が

生まれた後に世界中をどんな風に旅していくのか?をなぞっていくのは、

とても楽しい作業なのですが、


今回注目すべきは、「中国」が、脚本段階で洋画を買い付けている点。


あの外国映画に厳しいSARFTの認可は大丈夫なんでしょうか?

そっちも楽しみに行方を見守ってみたいと思います。

 

あ、それから、昨日のブログで全米で201110月公開と書きましたが、

4/15から公開されることになっていました。

imdb.com情報って100%じゃないんですね。気をつけます。

 

 

source: indieWIRE