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フランスコンテンツ市場の概況

JULY 2, 2010, PARIS, LOUVRE
さて、メトロに乗ってピラミデ駅に到着し、案の定、出口を間違え、
かなり予習した道を反対方向へずんずんと歩き、
余計なウォーキングを30分もしてしまったために、
会場についたときには すっかり汗だくになっていた私ですが、
あいにく会場となったこのステキに古い建物のホテルは、
エアコンが故障していたのか、もともとないのか、まるで蒸し風呂。

「開催中のジャパン・エキスポの熱気そのまま」という
JETROご担当者さまのジョークもややむなしく、
扇子をバタバタしながらワークショップに参加してきました。
JETRO-SEMINAR.jpg
今日のテーマは、
【フランスのコンテンツ市場概況】について、
フランスの音楽、ゲーム、出版、
音楽業界の関係者を招いてのセミナー。
そもそもコンテンツ類なのかどうか、
いつもビミョーなポジションに立っているせいか、
映画の関係者はいませんでした。
フランスの出版界では、「ナルト」や「ワンピース」、
「ドラゴンボール」などが大人気で、 「ナルト」に至っては、
月間売上が200万部だそうです。壮絶な数字です。
たしかにジャパン・エキスポの会場でも、
コミック即売所は黒山の人だかりでした。
SANY0256.jpg
しかもこの3作品は、世界的に爆発した『ハリポタ』シリーズよりも
2008年、2009年の年間売上で上位に位置しています。
映画が公開されてないのに、です。
それはすべて、テレビ放送の力によるものです。
「ドラゴン・ボール」などは、
もう20年前からテレビで繰り返し放送されているので、
実は日本製アニメということを知らない人がほとんど、
というくらいフランスの子供たちに支持されているそうです。
『ナルト』は、1日に2つのチャンネルが4回も放送していて、
圧倒的な認知力を誇っています。
しかし、そんな日本のアニメにも、
昨年、ついに危機が訪れました。
2009年にフランスの法改正があり、各チャンネルにおける
外国コンテンツの比率を制限する法律が制定され、
日本製アニメがシャットアウトされるという状況が起こっているそうです。
どの日本製アニメはOKか?というのは、
いわゆる「青少年省」という省庁が
検閲をかけた上で決定しているそうですが、
最近、もうひとつ大きく問題になっているのは、
フランス政府が打ち出した、
「テレビを見ると太る!」というコンセプト。
これに基づいて、子供番組へのマックなどの
大型スポンサーのCMが禁止されたそうです。
優良スポンサーを失った結果、
各局は子供番組を減らさざるをえない→
ますますアニメをかけるチャンネルが減った、
という構図。
しかし、そんな市井の感覚からズレた政策を、
恐るべきこどもたちが受け入れるわけがありません。
そこで活躍するのが、違法ダウンロードです。
そもそも日本製のアニメはよくできていて、
「早く次が見たい!」と 煽られるようにつくられています。
そのあたりは、アメリカのTVドラマの常習性と同じです。
規制をかけられて待ちきれないファンたちは、
どこからともなく最新エピソードをゲットして
(ソースは、日本のYOU TUBEや留学生からの「仕送り」)、
すぐに国内でアップします。
ご丁寧にファンが字幕をつけてくれるケースもあります。
ニーズがあるのに規制をかけるから、
ますます法の目をかいくぐるというイタチごっこ。
中国の規制と同じ現実が起こっていると思います。
これを許していたら、
どんどんコンテンツにお金を払うという概念が
一般消費者から消えうせてしまいますね。
さて、このような状況下、ライツホルダーは
どのポイントで権利を金銭化するべきでしょうか?
フランスでも音楽業界では10年前から
この違法ダウンロードの問題で苦悩していて、
2/3の雇用が消滅したと言われています。
映像業界もこのまま続けになるのか、
VODがDVDに代わる
新しいプラットフォームとなりうるのか?
フリーダウンロード社会を相手に
どう形勢有利に持っていくのか?
日本市場とは別の戦略を持って臨む必要があることは、
もう言うまでもありません。
違法にダウンロードする、海賊版が横行する。
つまり、市場にニーズがあることは間違いないのですから。
私のゼミ教授は、
「違法ダウンロードは、むしろ売り上げを伸ばす」という
過激な論文を発表し、
各方面からヒンシュクを買っているツワモノです。。
いまこそ先生にそれは本当なのかどうか、
今度詳しく聞いてみたいと思っています。
ちなみに2010年上半期のTOP10に
いきなり躍り出た『フェアリーテイル』は、
フランス語翻訳版が出る前からすでに人気を博してました。
これは、ネット上でファンの間で盛り上がり、
その熱を受けて出版化されたという、
C to Bの典型例です。
情報過多の時代、プロよりもアマの方が、多く情報を持っているもの。
私は、このC to Bこそが、
日本映画の海外市場開拓にも
大いに適用できるアプローチだと考えています。
経済的に弱体化したプロが欲しがるものと、
好みが細分化された消費者が欲しがるものに、
大きなギャップが生じているのが、
今のコンテンツ市場だと思うからです。
ところで、フランスのTV局が
現在メインのターゲットとして狙っているのは、
【まだなんの色もついていない7歳以下】の子供たちだそうです。
フランスの子供人口(15歳以下)は、総人口の18.3%。
日本は13.3%ですから、子供が多い国と言えます。
現地のプロデューサーたちが
日本のテレビ局に対して求めているのは、
7歳以下ターゲットのシリーズを共同で開発するという
共同製作モデルのようでした。
フランスとの共同製作モデルを日本でいち早く実践しているのが、
あの「鷹の爪団」のDLE、椎木社長でしょうか。
どんなに締め出しを喰らっても、
スルスルと新しい参入方法を考えて、
サクっと実践しているのが、世界のディズニーです。
フランスでもM6という子供向けチャンネルと
ディズニーが独占契約をしたことで、
実はM6からは日本のアニメは消えました。
参入規制の厳しい中国でも同じようなことが起こっていますが、
これはまた上海編で書くことにします。
とにかく、ボサっとしてるとマズイ。
ということは、よぉく理解できたワークショップでした。
ゲーム市場では、任天堂以外売れてない、
日本アニメは締め出しを喰らっている、
J-POPは言葉の壁があって、参入ハードルが高い。
映画はカンヌで賞を取った監督のものか
アニメ以外は知られてすらいない。
このような独り勝ち体制の市場では、
共存はますます困難です。
「目の付けどころが違う」経営者以外は、
一社集中傾向の中で、
あれよあれよと濁流に飲まれるしかないのかもしれません。
やれやれ、キビチイ世の中だな、まったく。
それにしても雨がやまないので、
サンジェルマン・デ・プレに行けません。